2022年6月29日の判決において、破毀院は、外国で行われた侵害行為の審理を拒否したパリ控訴院の判決(パリ控訴院2020年11月24日判決)を破棄しました。国際私法の古典的な準則を適用したにすぎない破毀院のこの判決は、今後発足する統一特許裁判所(UPC)における訴訟提起の得失について再考を促すものです。
当事務所は、本件でそれ以前に下された判決について、すでにKluwer Patent Blogで取り上げ、批判しておりました。破毀院は同様の批判を採用し、控訴審判決をすべての点において破棄しました。
事案を振り返りますと、フランスのHutchinson社は、英国のTyron Runflat社(Tyron)およびその南アフリカの供給者であるGlobal Wheel社、ならびにその製品を再販するフランスのDal社およびL.A. VI社を相手方として、フランス、英国およびドイツにおける自社の欧州特許の侵害を主張して訴えを提起しました。
本件において、パリ司法裁判所は、控訴院によって是認されたとおり、問題となる特許は同一であるとしても、行われた侵害行為は同一ではないとして、侵害行為の審理を拒否しました。すなわち、このような事実関係の相違は各裁判所の間で両立し得ない判断をもたらすおそれがあり、したがってフランスの裁判官はフランスについてのみ管轄を有するとされたのです。
これに対し、破毀院は、欧州連合司法裁判所(CJEU)が(CJEU 2012年7月12日判決、C-616/10事件)、民事および商事事件における裁判管轄ならびに判決の承認および執行に関する2000年12月22日の理事会規則(EC)第44/2001号第6条第1項(前掲第8条第1項と同一の文言で規定されています)について、同規定は「二以上の異なる加盟国に所在する会社が、これら加盟国のうち一国の裁判所に係属する手続において、それぞれ個別に、別の加盟国において効力を有する欧州特許の同一の国内部分について、同一の製品に関する留保された行為を理由として侵害の責任を問われている状況は、これらの事件が個別に審理された場合には、同規定にいう両立し得ない判断をもたらすおそれがある状況とみなされなければならないと解釈されるべきである。かかるおそれの有無は、事件記録のすべての関連要素を考慮して、国内裁判所が判断すべきものである。」と判示していたことを想起しています。
したがって、破毀院によれば、Hutchinson社が、フランスの各社およびTyron社がフランス、ドイツおよび英国において、同一の製品に関し、自社の欧州特許の同一の国内部分に対して加えた侵害を主張していたにもかかわらず、侵害訴訟を個別に審理することが両立し得ない判断をもたらすおそれがないかを検討すべきであった控訴院は、上記のように判断したことにより、前掲の規定に違反したとされました。
さらに、南アフリカの会社について、破毀院は、フランス民法典第14条によれば、フランス国内において通常の管轄基準がいずれも満たされない場合であっても、フランス人である原告は、訴訟とフランス領域との関連性を理由として、またはそれがない場合には適正な司法運営の要請に従って、自ら選択するフランスの裁判所に有効に訴えを提起することができると改めて述べています。ところが控訴院判決は、南アフリカに住所を有するGlobal Wheel社がフランス領域外で行った侵害行為について、フランスの裁判官は管轄を有しないと判断するにあたり、Hutchinson社は本件手続への併合の相当性を立証していないこと、フランスの裁判官はGlobal Wheel社が供給者であったTyron社が外国で行ったとされる行為について管轄を有しないこと、そして英国およびドイツの裁判所がそれぞれの領域内で行われたとされる係争特許の国内部分の侵害行為を審理する管轄を有することを理由としていました。このように判断したことにより、控訴院は、Hutchinson社のフランス国籍に基づくフランスの裁判所の管轄を排除するには足りない理由によって、上記規定に違反したとされました。
結局のところ、破毀院の判決は、私どもには常に自明と思われてきた国際的な法原則を確認したにすぎません。より広くみれば、オランダおよびドイツにも同様の判例が存在しており、そうであれば、このような状況においてUPCはどのような有用性を持つのかという疑問が生じます。
とりわけ、欧州特許の各国内部分を用いて欧州の他の地域における侵害を判断させるためにフランスで手続を開始することは、単一効特許よりも常に安価であり、しかも単一効特許は控えめにいっても基盤がなお脆弱な裁判所に依拠しているのです。
加えて、UPC手続に要する特許関連の費用を超えて、さまざまなリスク、すなわち制度そのものの(条約上の)制度的欠陥が組織的に争われるリスクも考慮しなければなりません。
要するに、2022年6月29日の判決により、破毀院は国際私法の古典的な準則を想起させるとともに、今後、企業が欧州規模の訴訟を提起することを決定する際に行うべき助言について、慎重に再考することを私どもに促しています(UPCか、UPC以外か)。
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