10 5月 2019

Conversant判決:特許法と営業秘密のはざまにあるFRANDライセンス

L’arrêt Conversant : les licences FRAND entre droit des brevets et secret des affaires



2019年4月16日にパリ控訴院がConversant c/ LG事件において下した判決は、フランスの裁判官がFRANDライセンスのロイヤルティの算定について(ようやく)判断を示すのではないかという期待を抱かせました。しかし、その期待は叶いませんでした。それでもなお、この判決には興味深い点があり、とりわけ必須性の分析と営業秘密に関する部分が注目に値します。

1. Conversant(旧Core)は特許ポートフォリオを保有しており、そのうち1,000件を超える特許が、欧州電気通信標準化機構(ETSI)に対して2G、3G及び4G規格の標準必須特許として宣言されています。Coreは、このポートフォリオについてライセンス契約を締結すべく、LGと数年にわたり交渉を行いました。しかし、この交渉は決裂しました。そこで2014年9月、 Coreは、一方では損害賠償を得るため、他方ではLGの通信機器に係るロイヤルティ料率の決定を求めるため、 LGをパリ大審裁判所(TGI)に提訴しました。援用されたのは5件の欧州特許でした。大審裁判所は、侵害の証拠が何ら提出されていないと判断し、2015年4月にこれらの請求を棄却しました。控訴審においても同一の争点が提起されましたが、Conversantが援用したのは当初の5件のうち2件の特許のみでした。被告は、特許の無効、FRANDオファーの不存在、さらにNokia, Qualcomm間のライセンスを提出したうえでの権利の消尽を主張しました。

2. 控訴院は最終的にFRANDロイヤルティ料率の決定について判断を示しませんでしたが、その判決は、必須性に関する分析を示している点、さらに、私たちの知る限り、特許法に関連する訴訟において営業秘密の保護に関する2018年7月30日法を適用した最初の判決である点で、興味深いものとなっています。

3. 本判決においては、まさに特許の必須性の欠如こそが、控訴院の検討に(早すぎる)終止符を打つことになりました。

本件において、第1の特許であるEP 0978210の請求項1は、「移動通信システムにおいて基地局を選択することを可能にする方法」に関するものであり、次の2つのステップを含んでいました。すなわち、「第2の基地局とマルチモード端末との間の不良な無線接続を識別すること」、及び「マルチモード端末における少なくとも1つの基地局信号の測定に基づいて、第1の基地局のうちの1つを選択すること」です。UMTS(3G)及びLTE(4G)規格の関連する技術記述によれば、品質が閾値を下回る無線接続が識別された場合には、請求項に記載された測定ステップを実施しなければなりません。これに対し、無線接続の品質が閾値を上回る場合には、端末は当該測定を実施するか否かを自ら決定することができます。控訴院はここから、良好な接続が存在する場合にも測定を実施する端末は規格に適合するものの、特許を侵害することにはならず、したがって当該特許は上記規格にとって必須ではないと結論づけました。

第2の特許であるEP 0950330については、その請求項1によれば、「無線インターフェースと、低レベルの信号フォーマットプロトコルに従って前記無線インターフェース上で送信される信号をフォーマットするためのフォーマット装置とを備えるユーザ端末であって、タイプ信号を受信するための手段を備え、前記タイプ信号は前記信号の送信に使用すべき高レベルのシグナリングプロトコルを示し、かつ前記信号を前記高レベルのシグナリングプロトコルに従ってフォーマットするための手段を備えることを特徴とするユーザ端末」に関するものでした。LTE端末は、「IPv4」及び「IPv6」と呼ばれるネットワークプロトコルの双方にアクセスすることができ、このことは、この請求項が対象とする選択ステップを実施することを意味します。したがって、原告によれば、請求項1の対象は実施されているということになります。控訴院は、当該特許自体は、IPv4及びIPv6の策定後に出願されたものであるにもかかわらず、これらのバージョンを区別しておらず、インターネットプロトコル(IP)に言及しているにすぎないと判断しました。さらに、規格は、両者が利用可能な場合に端末がIPv4とIPv6のいずれかを選択しなければならないとは明示的に定めていません。したがって、そのような選択ステップが規格によって要求されているとみなすことはできず、それを請求する特許が必須であるとみなすこともできません。

4. これらの検討の末に、決して小さくない問題が残ります。すなわち、特許が実際に侵害されているものの必須ではない場合、ロイヤルティはどうなるのか(quid)という問題です。一見したところ、そのような場合には、特許権者はもはやFRAND宣言に拘束されないことになります。そうであれば、特許権者は自ら選択するロイヤルティを自由に設定できることになります。もっとも、この仮定が現実のものとなるのは、特許権者が、規格の実施のみによらずに侵害を立証した場合に限られます。したがって、私たちは「標準的な」特許法の規律に立ち返ることになります。この立場は、一方の特許が無効とされ、他方の特許が必須ではないと判断されたVringo事件において大審裁判所が採用した立場とも一致しています(パリ大審裁判所、2015年10月30日判決、Vringo c/ ZTE、RG no 13/06691)。

5. また、営業秘密に関しては、2018年10月に下された付随的申立てに関する命令(ordonnance sur incident)を受けて、パリ控訴院は2018年7月30日法、とりわけ新設されたフランス商法典L.153-1条を適用することを決定していました。これにより、一部の証拠書類(特にライセンス契約)へのアクセスは、当事者の弁護士と、秘密保持契約に署名した一定の指定された者(特に通訳者及び経済学者)に限定されました。さらに、書面による主張については2つの版が提出されました。完全版と、問題となった各種ライセンス契約に関する秘密情報への言及をすべて除いた版です。最後に、口頭弁論は3日間にわたって行われました。初日の一部の時間帯には、法廷への立入りは当事者の弁護士と当事者の数名の代表者に限定されました。この非公開の審理は、最も機密性の高い証拠書類(特にNokia-Qualcomm間の契約)に充てられました。2日目には、FRAND料率の決定が審理されました。この日も、比較可能なライセンス契約が開示された時間帯には、法廷への立入りは上記の者及び一定数の指定された専門家に限定されました。3日目には、特許の有効性、必須性及び侵害が審理され、このときはいかなる立入制限も設けられませんでした。

6. 比較可能なライセンスの料率は、それ自体長期にわたる交渉の結果であることが多く、これを開示することを望む企業はまれです。この点に関し、ドイツでは営業秘密指令の国内法化がまだ完了しておらず、デュッセルドルフのOberlandesgerichtは、2017年のSisvel c/ Haier決定において、SEPの権利者は、比較可能なライセンス契約が秘密保持契約(いわゆる「NDA」)の対象となっている場合であっても、これを提出する義務を負うと判示したことを指摘しておきます(OLG Düsseldorf、2017年3月30日、Sisvel c/ Haier、事件番号I-15 U 66/15)。同じく2017年に下された別の決定であるUnwired Planet c/ Huaweiにおいて、同裁判所は、原告がNDAの提示を拒絶した場合には差別的な取扱いが推定されうる一方、侵害者とされる者が拒絶した場合には、その者は誠実なライセンス希望者ではないとみなされうると判示しました。その際、次の条項は合理的にNDAに含まれうるものと判断されました。すなわち、(i)開示を被告の従業員4名のみ(明示的に指名される者)に限定すること、(ii)秘密保持義務が雇用契約の終了後も存続することを求めること、(iii)1,000,000ユーロの違約罰を課すこと、及び(iv)秘密保持義務に対する限定的な例外を設け、その例外の立証責任を被告に負わせることです(OLG Düsseldorf、2016年12月14日及び2017年1月17日、Unwired Planet c/ Huawei、事件番号I-2 U 31/16)。

7. したがって、フランスの裁判官は、ドイツの裁判官が自国において同様のことをなしうるより前に、営業秘密指令を国内法化した法律に由来する規定を適用したことを誇ることができます。秘密保持が損なわれないばかりでなく、当事者は必要なすべての資料をもとに、非公開の審理において比較対象について議論することができるのです。したがって、私たちとしては、この2018年7月30日法の適用を歓迎するほかありません。とりわけ、この手続の秘密保持は、フランスの立法者による国内法化のうち、他の点ではきわめて不十分なこの国内法化において、おそらく唯一の積極的な側面であるだけになおさらです(同法に関する私たちの評釈、Recueil Dalloz 2018年1817頁を参照)。

8. もちろん、私たちが期待していたとおりの判決が得られたわけではありません。しかし、必須性に関する理由づけと、営業秘密に固有の手続の模範的な導入の双方から、控訴院は当該手続を現代化しつつ、特許侵害に関するいくつかの基本を改めて示したものと考えられます。そしておそらく、こうして特許は、すでにVringo事件において重視されたように、将来のFRAND交渉において、フランスにおいても世界の他の地域においても、より大きな位置を占めることになるでしょう。

 

Auteur : Dhenne Avocats.