現在、新型コロナウイルス感染症(いわゆる「Covid-19」)の原因であるコロナウイルスSARS-CoV-2に対処するために試験されている治療法は、いずれも既知の物質に基づくものです。これらの物質の大半は依然として特許によって保護されており、今後登場する治療法も、すでに出願がなされているか、これからなされる別の特許によって保護されることになります。したがって、奇跡の医薬品の製造は、いずれにせよ、これらの特許の権利者の許諾に左右されることになります。それでは、フランス当局は、この製造についてどのようにして主権を取り戻すことができるのでしょうか。
世界を襲うパンデミックを前にすると、私たちは、特許とは国家による収用によって難なく片付けることのできる、いわば縮みゆく「あら皮」(peau de chagrin)にすぎないと考えがちです。実際、2020年3月27日、ドイツ連邦議会は、Infektionsschutzgesetz(感染症予防法)を改正する特別法を可決しました。採択された法律の第1条は、Covid-19パンデミックの枠内において、連邦保健大臣がPatentgesetz(特許法)第13条を援用できると定めています。同条はこれまで一度も援用されたことがなく、連邦政府が公共の利益のために発明を使用するよう命じた場合には、特許は何らの効力も有しないと規定しています。
ドイツの収用は一見魅力的に見えるかもしれませんが、それは特許法を理解していない場合に限られます。この措置は、研究を奨励するというこの制度の論理そのものに、まさに研究が最も必要とされている時期に反するだけでなく、フランスと同様に世界貿易機関(WTO)の枠組みにおける知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の締約国であるドイツの国際的な約束をも無視するものです。想起すべきは、国家が特許権者に与える一時的な排他権は、発明に至るまでの研究への投資に報いるものであり、この排他権が公益を害することのないよう是正の仕組みが設けられているという点です。この点について、TRIPS協定は、公衆衛生の利益のための職権ライセンス(licence d’office)の仕組みを明文で定めています(第31条)。ライセンスとは、権利者が発明の使用権を付与する契約です。権利者は原則として誰と契約するか否かを自由に決めることができますが、一定の場合にはライセンスの付与を義務づけられることがあり、公衆衛生が問題となる場合がまさにそれに当たり得ます。もっとも、このようなライセンスを実施するためには、一定の要件を満たす必要があります。
これまで、この制度は一般に、開発途上国および後発開発途上国がエボラ、HIV、SARS-CoV-1あるいはMERS-CoVを克服するための優遇措置として位置づけられてきました。しかし、現在のパンデミックはその実務を変えつつあるようであり、すでに職権ライセンスの利用が一般化する傾向が見られます。たとえば、2020年3月17日、チリ議会は、Covid-19の世界的流行が、チリにおいてコロナウイルスに感染した者の監視、予防、検出、診断および治療に有用なワクチン、医薬品、診断薬、機器、物資その他の技術へのアクセスを容易にするために強制実施権を利用することを正当化するとの決議を全会一致で採択しました。3月19日には、イスラエル(過去にもすでに一定数の強制実施権を付与しています)も、ロピナビルとリトナビルの配合剤について同種のライセンスを付与すると発表しましたが、その後、3月20日に特許権者(AbbVie社)が権利行使を放棄しました。3月20日には、エクアドルもチリと同様の決議を採択しました。2020年3月25日、カナダ議会は、Covid-19に対応する一定の措置に関するC-13法を可決し、同法はとりわけ、Covid-19公衆衛生上の緊急事態の期間中における強制実施権を導入しています。2020年3月25日、Gilead社は、3月23日に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)から取得していたCovid-19を対象とするレムデシビルのオーファン指定を取り下げると発表しました。この取下げは、2020年3月30日に約100のNGOと十数名の著名人がGilead社のCEOに宛てた公開書簡で求めたとおり、同社がこの分子に関する特許権も行使しないことを予告するものかもしれません。
フランスでは、2020年4月7日に国民議会に提出された第2814号法案が、職権ライセンスの付与要件の緩和を提案しています。確かに、フランス法はこの制度を有していますが(フランス知的財産法典L.613-16条からL.613-18条)、これまで一度も利用されたことがありません。制度が知られていないことと、その複雑さが、利用されてこなかったことと無関係でないのは確かです。実体的要件と手続的要件はとりわけ厳格であり、TRIPS協定第31条への適合性を念頭に置きつつ、立法者がこれらを精緻化することがおそらく望ましいでしょう。たとえば、現在は対象とされていない特許出願にまでライセンスを拡大することが考えられます。規制面にも注意を払う必要があります。とりわけ、特許の存続期間満了後に医薬品を保護する補充的保護証明書(SPC)にまでライセンスを拡大すべきでしょう。さらに、ライセンシーが販売承認(AMM)または一時的使用許可(ATU)を取得できること、そしてオーファン指定や小児用医薬品開発計画が発明の実施の妨げとならないことを確保する必要があります。
したがって、2020年4月7日の法案が示す方向性は、その提案理由説明を読む限り道筋の示し方は拙いものの、興味深いものです。とりわけ、公衆衛生法典に新たなL.3131-15条を導入した2020年3月23日の第2020-290号法律第2条は、首相が規制面に介入することを可能にするように思われます。同条は、首相が規則制定のデクレによって「必要に応じて、衛生上の大災害の根絶に適した医薬品を患者が利用できるようにするためのあらゆる措置を講じる」ことができると定めているからです。
あとは、これらの知的財産上の問題の重要性が理解され、拙速に扱われることなく、最終的に採択される措置が長期的にフランスの研究と経済を支えるにふさわしいものとなることを願うばかりです。
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