特筆に値するほどまれな出来事です。去る4月23日、エマニュエル・マクロン大統領は、ワクチンを保有する国々にその共有を呼びかける演説の中で特許に言及し、同時に特許の「解除」には反対する立場を示しました。しかし、この特許の「解除」をめぐる論争は見当違いであり、真の問題、すなわち職権実施権(licence d’office)の手続の開始という問題から議論をそらすものです。
特許は、20年間の一時的な独占権によってイノベーションに報いることを目的とする手段であり、政治的言説において話題にのぼることはまれです。そうしたなか、マクロン大統領は、4月23日の声明において、それ以前の保健大臣および産業大臣と同様に、衛生危機の解決に向けた特許の「解除」には反対であると述べました。この声明は、特許制度の現実との乖離という点で驚きを与えるものです。
WTOで締結された協定に反する特許の「解除」
特許の「解除」という考えは、今年初めに、とりわけ議場の極左勢力の間で浸透し、そこから修正案が生まれました。特許を「解除」すれば、ワクチンを共有財とすることができ、誰もが無償でアクセスできるようになるというのです。この考えは新しいものではなく、NGOの言説にたびたび登場します。NGOは、エボラ出血熱やHIVのような衛生危機に一部の国が対処できないことが話題になるたびに、特許を標的にしてきました。
しかし、この特許の「解除」という考えは、現実の試練にさらされると空虚に響きます。何よりも、それが真の問題を回避させ、したがって、それとともに考えうる解決策をも回避させることになる点に注目せざるをえません。
このような「解除」は、特許の効力を停止することを意味し、法的には収用を伴います。だからこそ、この「解除」を唱える人々は、ワクチンを人類の共有財や世界公共財、つまりいかなる独占も、したがっていかなる所有も許さない財とすることを提唱する人々と入り混じっているのです。
ところが、特許権者の収用は、フランスの国際的な約束に適合しません。フランスは、世界貿易機関(WTO)の枠組みにおいて、TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に署名しているからです。同協定は、厳格な条件を遵守することを留保して、特許の使用を制限する可能性を定めています。各国は、同協定に従ってこの趣旨の規定を設けることは自由ですが、収用を定めることはできず、一定の条件のもとでの制限のみが認められています。こうして、フランスでは、フランス知的財産法典が職権実施権の制度を設けており、これにより、公衆衛生の利益が必要とする場合に、国家が特許へのアクセスを容易にすることができます(フランス知的財産法典L.613-16条)。
WTOにおける議論に反する特許の「解除」
とはいえ、WTOでは、現在のパンデミックに関連する知的財産権の一時停止の可能性について議論が進行中です。もっとも、この一時停止は特許だけを対象とするものではなく、あらゆる知的財産を対象とするものであり、WTOにおける議論に照らすと、現時点では実現の見込みは乏しいように思われます。
さらに強調すべきは、南アフリカを筆頭とする一部の国々が求めている一時停止は、各国が国内レベルで行動することを強いられる事態を避けることのみを目的としている点です。実際、WTOにおけるこのイニシアチブは、収用そのものよりも、意思決定を国際レベルへと移すことを目的としています。それにより、各国が個別に行動することを強いられ、製薬産業が自国の領域から逃げ出すおそれを負う事態を避けようとしているのです。言い換えれば、これは、特許の「解除」としばしば結びつけられるワクチンの国有化とは正反対のものです。
見過ごされている真の問題:職権実施権の手続が開始されていないこと
結局のところ、共和国大統領をはじめとする行政府全体が、特許の「解除」に反対するにとどまり、わが国の実定法に存在し、ワクチンの製造を容易にしうる職権実施権の仕組みを知らないふりをしている理由は理解しがたいものです。
もっとも、このようなライセンスの付与を目的として去る4月8日に元老院に提出された議員立法案により、この嘆かわしい政府の不作為が(ようやく)補われる可能性があることを付言しておきます。
本寄稿は当初Les Échos紙に掲載されました。
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